安酒一杯

「常識で考えろ!」「普通に考えたら分かるだろ!」子供の時に怒られた。でも、「常識」ってなに?「普通」って?大人になってから考えてみた。

なぜ年上を敬わないといけないのか?

どうして先に生まれたからという理由で敬う必要があるのだろう?

そもそもこの考えは世界共通なのだろうか?

この問題を解く為に、まず人の道徳観に強い影響を与えているのは宗教ではないかと考えた。その上でいくつかの宗教では血縁関係以外の人の序列についてどう扱ってるかを調べた。

 

キリスト教…神の下に平等

イスラム教…神の下に平等

ユダヤ教…神の下に平等

ヒンドゥー教カースト

シク教…神の下に平等

・仏教…平等

儒教…年上が偉い

道教…平等

 

一部間違いはあるかもしれないが『(育ての)両親を敬うべき』という記述はあっても『年上を敬う』ことに言及しているのは儒教しか見当たらなかった。

勿論、道徳観は『この国はOO教だから国民はこう考えている』と簡単に説明できるものではない。様々な宗教や国の成り立ち、他国の影響などが絡み合いできている。

しかし、仮に『年上を敬うべき』という考えが儒教に端を発しているならば、どういった理由でこの考えに至ったのか?儒教の基礎であろう『論語』を読んでみた。

結論を言うと「年上は優れている」や「年上は長く生きている分経験が豊富で賢い」、「年上の言う事は絶対」という記述は無かった。(少なくとも私には見受けられなかった。)

では、なぜ『年上を敬うべき』と言ったのか?

儒教の始祖である孔子は平和を好んだ。その平和を実現する為にはどうすれば良いのか?それは争いが起こらないようにすれば良い。争いが起こらない為にはどうすれば良いのか?人々が争いを好まない道徳を持つようにすれば良い。争いを好まないのはどんな人か?両親や兄、年長者によく仕える人である。

つまり、年上を敬うのは争いが起こらない様にする為だ。

では上が無茶苦茶をしたらどうすれば良いのか?孔子は3つの方法を答えている。

1.逆らってでも諌める。

2.逃げる。

3.狂人の真似をする。

上の3つ全てが仁(儒教で言う所の最高の徳)であると言っている。

現に孔子は主君が好戦的な態度を見せるとその国を離れたり、武力を行使する主君が自身に仕える様命じて来ても角の立たない返答をして聞き入れていない。

年上を敬うのは年上が年下よりも優れているからではなく、争いを起こさない様にする為の行為なのだ。

 

 

(参考文献)

金谷 治(2013)論語電子書籍版〕岩波文庫