デザートを最後に食べるのはなぜ?
デザート(甘いもの)は美味しい。
美味しいのだから先に食べればいいじゃんと思うが、その様な食べ方は一般的ではないようだ。これをやろうとして親に怒られた人もいるのではないだろうか?
世界の料理を見ても甘いものは最後に食べることが多い。
なぜ甘いものは最後に食べるのだろうか?
これは食事を美味しく感じる為である。
具体的に言うと2つの理由がある。
1つ目は甘いものを食べると満腹になってしまうからである。
甘いものには糖分が含まれる。糖分を摂ると血液中の糖分の量(血糖値)が上がる。この血糖値の上昇を脳内の満腹中枢が感じ取ると「お腹いっぱいです。」という指令が出る。
お腹いっぱいだと料理は美味しくなくなる。だから甘いものを先に食べないのだ。
もう1つの理由は「食事の最後がどの様に終わったか」がその食事の良し悪しに大きく影響するからだ。
つまり、最後が美味しいで終われば食事全体が美味しかったと感じ、最後が不味いであれば食事全体が不味かったと感じる。
これはピーク・エンドの法則と呼ばれるものである。
ピーク・エンドの法則とは自分の経験をピーク時と終わり際(エンド)だけで、その良し悪しを判断してしまうという心理現象だ。
言葉だけだと分かりにくいので、ピーク・エンドの法則を提唱したダニエル・カーネマンの実験を挙げる。
何人かの被験者に2パターンの体験をしてもらった。
(A )痛い程に冷たい水に60秒間手を浸す。
(B )痛い程に冷たい水に90秒間手を浸す。スタートして60秒間は(A)の時と同じ冷たさで、その後の30秒間は温度を少し上げて(A)の時程は痛くない冷たさにする。
この2つの体験をした後に、被験者にもう一度受けるなら(A)と(B)どちらが良いかを聞いた。
さて、被験者はどちらを選ぶだろうか?
一見すると全員が(A)を選びそうである。(B)の方は(A)と同じ痛みに60秒耐えた後、痛みは減るとはいえ30秒間追加で耐えなければならないのだから。
しかし、結果は8割以上が(B)を選んだ。
これは何を表しているかというと、人はどのくらい不快に感じたかを受けた痛み総量ではなく、1番痛かった時と終わり際の痛さを平均して判断しているということである。
(A)はピーク時の痛みと終わり際の痛みがほぼ同じである。なので、平均するとピーク時とほぼ変わらない痛みだったと記憶する。
それに対して(B)はピーク時の痛みより、終わり際の痛みは軽減されている。平均するとピーク時程の痛みはなかったと記憶する。
結果、(B)の方が嫌ではないと感じるのだ。
つまり、最後がどうだったかが経験の良し悪しを記憶するのに大きく影響している。
食事であれば、最後が不味い料理であれば1番美味しかった時と最後の不味さを平均してその食事全体がどうだったかを記憶する。
逆に言えば、最後が美味しければ、1番美味しかった時と平均して、その食事全体が良かったと記憶しやすい。
だから美味しいデザート(甘いもの)は最後に食べた方が良いのだ。
結論として、デザート(甘いもの)を最後に食べる理由は
(1)糖分を摂って他の料理を食べる前にお腹いっぱいにならない様にする為
(2)最後に美味しいものを持ってきて、食事全体が良かったと脳に記憶させる為
の2つである。
(参考文献)
ダニエル・カーネマン(2014)ファスト&スロー(下)あなたの意思はどのように決まるか?早川書房